野菜 食べない

肉や魚から摂れない野菜だけに特有な栄養素

肉と野菜

最近は肉食が流行していることもあり、肉や魚と主食のお米にばかり偏っている人も増えてきています。糖質とタンパク源となる肉魚卵さえ食べていれば大丈夫と思っている人もいるかもしれませんが、野菜には野菜でしか摂ることが難しい栄養素が豊富に含まれています。

 

野菜特有の栄養素ってなに?

野菜には食物繊維とビタミンCが豊富に含まれます。いずれも肉魚などからは摂取が難しい栄養素です。他にもビタミンE、ビタミンA(カロテンなど)、葉酸などのビタミン類やカリウム、カルシウムなどのミネラルが多いことも野菜の特徴です。(1)

 

人間は野菜からビタミンA摂取量の56%、ビタミンCは31%、カリウムは24%を摂取しているというデータもあります。つまり、野菜を食べないとビタミン不足、ミネラル不足、さらには食物繊維も不足しがちになることが容易に想像がつくのではないでしょうか。(2)

 

野菜に多い食物繊維のはたらき

食物繊維は第六の栄養素とも呼ばれ、健康を保つ上で欠かすことができない栄養素の一つです。食物繊維には人間の身体の血となり肉となるような栄養は確かにありません。しかし、食物繊維には病気を予防する上で大切なはたらきがあります。

  • コレステロールの上昇を抑える
  • 血糖値を安定させる
  • 腸内環境をきれいにする
  • 腸内細菌のエサになる

食物繊維が多く含まれる食品は、野菜以外にも穀類、海藻類、くだもの等があります。肉や魚などのタンパク源からは摂取することができない栄養素なので、『野菜不足=食物繊維不足』となります。

野菜を食べないことで起こる健康や美容の影響

肉食

最近は「肉食」に走る人が増えていて、糖質制限ダイエットの影響もあり肉をメインとして多食する傾向が強くなっています。そもそも、日本人は農耕民族であったことからも、植物性の食材を多く食べていましたが、戦後から急激に食生活が欧米化して肉食が強まってきました。

 

農林水産省の調査によると1960年における食肉消費量は約3kg程度だったところが、約50年後では14倍以上の43kgまで増加するだろうともいわれています。

 

肉食が増えたことで日本人の体格は大きく変わってきましたが、一方で健康を害する原因にもなってきているのも事実です。

 

野菜不足は健康にも美容にも悪影響

野菜不足により血液の質が悪くなることで、だるくなったり、疲れやすいなどの体調変化や、悪玉菌の増殖により体臭や肌荒れなど美容面における影響も考えられます。(3)

 

野菜不足により食物繊維の摂取量が減ることで、血中コレステロール値などが高くなるとドロドロ血となります。栄養が全身に行き渡りにくくなることで、病気とはいかなくても体調が何となく優れない、疲れやすいといった不調を感じやすくなることも。

 

また、食物繊維が不足することで腸内環境が悪化すれば、便秘を引き起こしたり、悪玉菌が有害ガスを発生させて口臭・体臭がきつくなったり、ニキビや吹き出物などの肌荒れなども起こりやすくなります。

 

野菜には生活習慣病やガン予防に役立つ栄養素も

野菜を多く食べる人の方が脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果がさまざまな研究で厚生労働省により発表されています。(4) 肉食により腸内環境が悪化していることで、大腸(結腸)ガンの発生率が増えてきているというデータもあります。(5)

 

また、野菜にはカリウムが多く含まれているため、血圧の安定サポートも期待できます。ナトリウムの排泄を促す作用があるカリウムを取り入れるためにも野菜を十分に摂取することは大切なことです。

野菜しか食べないのも栄養の偏りになる

食物のバランス

野菜ばかり食べていれば良いのか、極端にいえばベジタリアンになれば健康なのかというと、そうとは限りません。野菜しか食べないのは決して健康的な食生活とはいえず、むしろ栄養が偏ってしまうので良くありません。

 

あくまでバランスよく食べることが大切

野菜はもちろん大事ですが、人間の体を作る上では糖質、タンパク質、脂質という3大栄養素は欠かすことができません。そのためには、適量な肉・魚・卵、穀類、海藻類、豆類などもバランスよく食べることが大切です。

1日に必要な野菜の量は350gが目標

では1日あたりにどのくらいの野菜を食べれば十分な量といえるのでしょうか?適正な量を知ることから始めましょう。

 

厚生労働省が推進している「健康日本21」では、健康増進の観点から1日350g以上の野菜を摂取することが推奨されています。(4)

 

具体的に1日350g以上というと、どれだけの量か想像できるでしょうか。一度に350gと考えると食事に置き換えて考えにくいので、1皿70gを5皿食べることを考えます。

 

例えば、

ほうれん草のおひたし一皿
野菜サラダ一皿
かぼちゃの煮物1鉢
野菜カレー2皿分
野菜炒め2皿分

となります。合計7皿になるように目指して1日で食べるようにすると目標を達成しやすくなります。全国的な平均値から考えると約1皿分不足している人が多いので、あと1皿何かをプラスするようにすると良いでしょう。

 

野菜の種類もバランスを意識する

緑黄色野菜

厚生労働省が掲げている「健康日本21」では、野菜摂取の目標量を「1日350g以上、そのうち緑黄色野菜を120g以上」に設定しています。

 

つまり緑黄色野菜を120g、淡色野菜、きのこ、海藻類などを合わせて230g以上が目安となります。でも、付け合わせやコンビニのサラダなどに入っているのは、きゅうりやレタス、キャベツなどの淡色野菜が多くなりがちです。

 

バランスよく野菜を摂取するため、トマトやほうれん草、かぼちゃ、にんじん、ピーマン、アスパラガスなどの緑黄色野菜を意識的に取り入れるようにしましょう。

日本人は若い年代ほど野菜不足の傾向にある

では、日本の現状はどうなっているのか野菜摂取の実情を把握しておきましょう。昔と比べて肉食になっている傾向があり、野菜不足が良く叫ばれていますよね?特に、食生活が乱れやすい若い年代ほど野菜不足は深刻な状態です。

 

1日平均50gもの野菜不足

厚生労働省の調査によれば「平成29年の同調査での野菜類平均摂取量を見ると、成人男性で約300g、女性で約280gとなっています。特に20〜30歳代は男性で約260g、女性で約230gと成人の平均より約50gも少ない」という報告があります。

 

若い年代では健康への意識が低いことや、生活リズムが乱れやすいこと、食費を多くかけられない、忙しいなどの理由が背景にあると考えられます。

サプリや野菜ジュースは野菜の代用にならない

野菜ジュース

「野菜の代わりにサプリを飲んでいるから大丈夫」、「サラダの代わりに野菜ジュースを飲んでいれば良い」という間違った考えを持っている人も多くいます。

 

確かにビタミン・ミネラルなどの栄養面だけ考えるとサプリで手軽に摂取することができます。でも、野菜には他にも栄養以外のフィトケミカル、ポリフェノール、食物繊維などの栄養成分が含まれています。他にも野菜を食べることには、味や香りを楽しむという要素、季節を感じる楽しみなどもあります。

 

栄養面を考えても野菜の方がさまざまな栄養素を同時に摂取でき、互いに協力しあって働く栄養素を効率よく摂取することもできます。

 

野菜ジュースで1日分の野菜が入っているなどと謳っている商品もありますが、野菜として摂取するのとは栄養面で大きな差があります。残念なことに、野菜ジュースでは保存性を高めるために加熱処理されているため、栄養素が壊れてしまっているのです。(6)

 

食物繊維も野菜ジュースの場合にはほとんどの商品が半量以下に減っているそうです。糖分も入っているので飲みすぎは要注意。野菜ジュースを飲んでも野菜を食べたことにはならないので、あくまでも補助的なものと考えましょう。

スープや蒸し物で野菜の栄養を効率的に摂取する

野菜スープ

野菜を食べなさいといわれると、生のサラダを食べることに走りがちかもしれませんが、効率よく野菜を摂取するにはコツがあります。

 

野菜は生のままだとカサが大きくて、たくさん食べようと思っても食べられません。摂取量を増やすには、火を通してカサを減らすことがポイントです。具沢山のスープや煮物、蒸し物などにすると食べやすくなります。

 

また、緑黄色野菜に多く含まれるβカロテンは生のままでは吸収されにくく、油と一緒に炒めるほうが吸収されやすくなります。一つの調理法に偏らず、さまざまな種類の野菜を色々な調理法で食べるようにしましょう。

総論:野菜を食べる大切さについて

なんとなく今までも野菜を食べることは大事なことだと分かっていたかとは思いますが、より一層その大切さに気がついた人も多いのではないでしょうか?

 

野菜をバランスよく食べることは、病気の予防につながり、美容的な面においてもプラスとなります。また、色とりどりの旬の野菜を食べるようにするだけで、食生活がワンランクアップして日々の暮らしにも変化が生まれることでしょう。

 

野菜には私たち人間が体内で作り出すことができない、素晴らしい栄養素がたっぷり入っています。自然のめぐみでもある野菜をもっと意識的に食べるようにしていきましょう。

 
笹尾真波さん

この記事のライター薬剤師:笹尾真波

薬剤師および薬学修士。
趣味はヨガと旅行。
大学院卒業後、某内資系製薬企業にて市販薬の企画開発・マーケティングなどに携わる。その後、都内大型門前病院前のドラッグ併設調剤薬局にて調剤業務および市販薬のバイヤー・在庫管理・販売にも携わる。サプリメント・ハーブやオーガニックコスメ販売にも従事。

外資系製薬企業にてDI業務および学術情報部門で4年ほど勤務(主に糖尿病、免疫関連を担当)。その後、小児科門前の調剤薬局にて管理薬剤師の経験を積む。
現在は非常勤薬剤師として調剤薬局で勤務する傍ら正しい薬の使い方、さらに生活習慣や食習慣の改善を提案をする薬剤師ライターとしても活動中。

 

参考文献

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